「世界文化遺産」地域連携会議 設立趣意書                  
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 20110607

 「世界文化遺産」地域連携発足会

  

  


 <開会>(司会:井戸)

 皆さま、本日はようこそお越し下さいました。定刻でございますのでこれから、記念すべき「世界文化遺産」地域連携会議の発足会を始めさせていただきたいと思います。

私は、この会の発足に際し「呼びかけ人会」の事務局の、1つを受け持っておりました、関西の広域組織、歴史街道推進協議会の井戸と申します。どうか進行へのご協力、よろしくお願い申し上げます。


  

 お手元のファイルの資料、一番上のペーパーに書かれておりますように、本日は、会の発足に際しまして、3つほど討議していただかなければいけない事がございます。できるだけ短時間でこれらの結論を得まして、後半の部では、できるだけ多くの皆さまからのご発言を願いたいと考えております。

 また、冒頭ペーパーの一番下に書いておりますように、終了後、この会場の地下で交流会、また朝っぱらからからこういうのも何なんですが、夜には東京駅近くで懇親会も予定しております。お申込みをされていない方のご参加も可能ですので、そちらの方も宜しくお願い申し上げます。

 

 それではまず、本日のご来賓の皆様をご紹介させていただきます。

本日は実は文化庁から、文部科学副大臣の笹木竜三さんがお越しになる予定でございましたが、残念ながら急なご用が入られたということで、本日はご欠席ということでございます。

そして文化庁、世界文化遺産室長の小林様でございます

次に、歴史まちづくり法等を所管しておられます国土交通省、景観・歴史文化環境整備室長の岸様でございます。もうお一方、観光庁の国際交流推進課長の瓦林様がお越しになる予定ですが、少し遅れるというご連絡が入っております。

 

 <出席者ご紹介>

 次に、ファイルから、討議資料をお出しいただき、1枚おめくり下さい。一覧表、のようなものが出てまいります。

 ご承知のようにわが国には現在11地区の世界文化遺産がございまして、関係する市町村がこの表のようになってございます。

 今回、その全ての関係市町村にお声がけをさせていただいきました所、表の右側にございますように、ほぼ、全地域にご賛同をいただきまして、本日この日を迎えるに至っております。
 登録順に本日ご出席の方をご紹介させていただきます。

 1993年の第1号指定地は「法隆寺地域の仏教建築物」と「姫路城」でした。法隆寺の斑鳩町から、小城町長様。また、姫路市長様の代理で姫路市から岡本理事様。

  翌94年の「古都・京都の文化財」から、門川・京都市長様。久保田・宇治市長様。

  95年の「白川郷・五箇山の合掌集落」から、田中・南砺市長様。

  翌、96年には「厳島神社」と「原爆ドーム」の2箇所が同時に指定されております。廿日市市の真野(しんの)市長様。広島市長様の代理で、福本次長様。

 98年指定の「古都・奈良の文化財」からは、奈良市長様の代理で、西手参事様。

 翌、99年の「日光の社寺」から、日光市長様の代理で、観光交流課長の海老原様。


 2000年の「琉球王朝のグスク及び関連遺産群」からは2市3村に参加表明をいただいておりますが、本日は沖縄県の糸洲主査様にご臨席いただいております。

 続いて、21世紀に入りまして最初の指定となったのが「紀伊半島の霊場と参詣道」です。今日は三重県ならびに関係市町で作ってらっしゃいます、東紀州観光まちづくり公社の、北村事務局長様にお越しいただいております。

 そして、現在の所、最も新しい指定となっておりますのが、2008年の「石見銀山遺跡とその歴史的景観」でごさいますが、大田市は現在議会開催中ということで、島根県の土江課長様においでいただいております。

 本日、ご欠席の所も含め、11地区に関連する23の地域のご賛同を得まして、今日この会に至ったということでございます。お手元に各地のパンフレットもご用意させていただいておりますので、ご参照いただければと思います。

 
 さて・・・この会ですが、市町村長様、また行政スタッフの方々だけの会ではございません。次の4P・5Pをお開き下さい。ズラリとお名前を記載させていただいておりますが、ここにございますような「ご専門家、地域リーダー、情報や観光のご関係者」の方々に、この会にご参集いただいております。

実は昨日の懇親会で何割かの方に自己紹介をいただいておりますので、失礼ながら今日は私の方から皆様をご紹介させていただきます。なお、お手元ファイルの1番下側に冊子がございますが、そちらの方に皆様方のプロフィールを書いてございますので、是非、ご参照いただければと思います。

 まず、当会の呼びかけ人会メンバーのお1人で、「世界遺産劇場」を主宰してこられた有川様。同じく、国民生活センター顧問の糠谷様。同じく、NHKで長く文化財関係の報道に携わっていらっしゃいます、毛利様でございます。もうお人方、呼びかけ人会メンバーで、全国街道交流会議代表幹事の藤本様でございますが、本日は30分ほど遅れられるというご連絡をいただいております。

 正面向かって左側に移りまして、以下は失礼ながら、プロフィール集をご参照いただきやすいよう、五十音順でご紹介させていただきたいと存じます。

 世界遺産をクラシックカーでめぐる「ラリーニッポン」など、幅広いご活躍をされている井植様。ナショナル・ジオグラフィックス誌のコーディネーターも務めてらっしゃった、糸永様。ワールド・モニュメント財団日本代表の稲垣様。京都駅ビル取締役の井上様。NPO代表で、国交省の成長戦略委員であり、着地型観光の第一人者でもあられます大社様。最北端の北海道からお越しいただきました、伊達市噴火湾文化研究所長の大島様。震災後の客足が戻りつつある日光から、NPO日光門前まちづくり理事長の岡井様。群馬県立女子大教授で、NPOぐんま理事の熊倉様。旅行読売出版社の熊崎様。京都新聞・齋藤相談役様の代理で、東京支社長の結城様。

元JNTO理事で松蔭大学観光文化学部長の澤田様。最南端の沖縄からは、NHKアナウンサーで、NPO沖縄イケメン連の白鳥様。元JALツアーズ社長で現在はベネフィット・ワン顧問の須藤様。紀伊半島から、田辺熊野ツーリズムビューロー会長の多田様。奈良より、NPO、奈良好き人のつどい理事長の辰巳様。

 
正面に向かって右側に移りましてJNTOでソウル・NY事務所を取り仕切ってらっしゃった谷様。PHP研究所の寺田様。京都から、NPO遊悠舎京すずめ理事長の土居様。交通新聞社「トレたび」チーフエディターの富岡様。同じく交通新聞社より「旅の手帖」の中村様。姫路から「歴史と出会えるまちづくり船場城西の会」の中山様。白川から、「トヨタ白川郷自然学校長」で「NPO法人白川郷自然共生フォーラム」の西田様。日本地図センター理事長の野々村様。「世界遺産」専攻科をお持ちの筑波大学から、羽生様。近畿日本ツーリスト地域振興事業部長の福井様。


 神戸新聞執行役員東京支社長の皆川様。広島からお越しいただいております、日本旅行中国本部長の山岡様。サンケイ新聞文化部の山上様。そして、共同通信社の吉永様でございます。
 最後に、私のお隣が東洋大学・国際地域学部の島川さんでございます。

 

 <討議事項1・2>

 それでは審議事項の1つ目に参りたいと思います。お手元資料の6P・7Pをお開き下さい。

 まず、何のためにこの会を発足させるのかにつきまして、「呼びかけ人会」が皆様方に事前にお配りいたしました資料と同じ文章をこちらの方に掲載させていただいております。

 これをもって会の発足趣意書とさせていただきたいということですので、読みあげさせていただきたいと思います。

 討議資料1:「世界文化遺産地域連携会議」設立趣意書(案)

 わが国が世界遺産条約を批准したのは1992年、また、第1号の世界文化遺産として姫路城と法隆寺が認定を受けたのは1993年のことである。

 以降20年近くの間、「顕著な普遍的価値」を持つ文化遺産としては11箇所が登録され、各々の課題を抱えつつもその維持保全や周辺整備、あるいは「持続的な観光」の推進といったテーマに取り組んできた。

 しかし、残念なことに、世界文化遺産に関連する各市町村間で遺跡の保全やそれを核としたまちづくり、観光のあり方等について日常的かつ広範に情報交換し、互いに啓発しあっていくような場は十分に設けられてこなかった。

 世界文化遺産を持つ地域は全国各地に及んでおり、その内容、規模、範囲などにはそれぞれの個性が見られる。だが、各地域は明らかに共通する、大きな課題を抱えてもいる。

 文化遺産の維持保全については、いかに百年千年のスパンでそれを達成していくか。
 文化遺産を核としたまちづくりの長期計画を作成し、それをどう形にするか。
 観光に関しては、世界文化遺産の魅力をいかに発信するか、また時間の経過にともなう「ブーム」の衰退や観光客増がもたらすマイナス要因をどう捉え、「顕著な価値の普遍性」を次世代に継承していくか、といった点などである。

 まず必要なのは、各地域が過去おこなった取り組みやこれからのビジョンを披露しあうことを出発点に、相互に応用可能なヒントを探り出していくといった作業であろう。

 各関連市町村のトップが一堂に会し、また日常的な交流を始めて行くことの第一の意義は、各方面での理念、ノウハウ、情報などの共有と相互活用にある。

 

 会を発足させる二つ目の意義は、世界文化遺産に対するより広範な支援の獲得である。

 民間セクターとの関係においては、例えばメディアや旅行会社、スポンサーといった協力者に対する共通の窓口を設けておくことにより、支援の輪を大きく拡大していくことが期待される。

 一方で、国において世界文化遺産の存在を強く意識し、地元におけるその維持・保全・活用への努力を十分に把握・評価しているのは今の所、文化庁内だけにとどまっている。いわゆる省庁間の縦割り意識の下、例えば遺産周辺整備などに対する、政界や他省庁における理解・認識はまだまだ不十分なものに過ぎない。

 また、世界文化遺産は「観光」の語源となる「国の光」の最たるものとしてすでに国際的認知を得ているが、「観光立国」を旗印とする観光庁においてすら、それらを積極的に評価・支援・活用していく気運は十分とは言えない。

 会の結成が目指す第二の点は、各関係地域が共同行動を起こし円滑な外部支援を受ける体制を作るとともに、国等に対して広範な提案をおこなうことによって、やや行き詰まり感を見せ始めている現状を打開・改善していくことにある。

 
 そして第三の意義は「無理のないゆるやかな連携」の中で、地域自らが様々な共同事業を形にし、各地域のさらなる活性化や事業支出の効率化を図っていくことである。

 大きな資金負担なしに実現可能な共同・連携事業は多数、考えられる。参加意思をもつ地域間での事業(例えば海外・東京などでのPR活動)、複数地域に共通するニーズを満たすための事業(例えばイベントやゴミ持ち帰り運動)、ある地域が企画する事業(例えばシンポジウムや市民交流)に会や他地域が協力していくことなどである。

 わが国の文化・観光を振興し、新しい地域づくりを先導するという面でも、世界文化遺産に関連する地域が主体的に、何らかの共同事業・連携事業に取り組んでいくことの意義は大きい。

 

 ・・・ということなんですが、これをもって会の発足趣意書、ということにさせていただくということでよろしいでしょうか?

 (拍手)

有難うございます。


  


 それでは次に討議事項の2、会の規約案についてお示しさせていただきたいと思います。
 こちらもすみませんが、読み上げさせていただきます。

 
 討議資料2:「世界文化遺産」地域連携会議規約(案)

第1条(名称)

本会は、「世界文化遺産」地域連携会議(以下「会」という)と称する。

第2条(目的)

会は、日本国内の「世界文化遺産」に関係する市町村とそれに関連する専門家や市民リーダーが連携し、相互の親睦を深めるとともに、文化財の永続的な保全やそれを前提とした観光と地域づくりのあり方、各種の共同事業実現などについて、積極的な情報交換をおこなうことをその目的とする。

 第3条 (構成) 

1 会は世界文化遺産を有する日本の市町村長、世界文化遺産・地域づくり・観光・地域連携などにかかわる専門家、地域リーダー、情報・観光関係者、行政スタッフなど、200名以内により構成する。

 

・・・ということで、さきほど冒頭にご紹介させていただいた皆様方に、本日ご欠席の方々のお名前を加えたものを、次の10・11Pに、別添資料としてつけさせていただいております。

規約の方にまた戻りまして・・・

2 新たに世界文化遺産に指定された地域を新メンバーとして迎え入れる。

3 メンバーの推薦により、新たな地域リーダー、専門家、メディア関係者などを会議に迎え入れることができる。

4 行政関係者は原則として役職をもってメンバーとなるが、役職を離れた際にも個人として引き続き会に参画することができる。

5 国の関係者、世界自然遺産、無形の世界文化遺産、世界文化遺産暫定リストに登録された地域は、メンバーに準ずる立場として会に参画することができる。

 

第4条(役員・委員等)

会に次の役員・委員等を置く。
(1) 会長    1名
(2) 副会長   若干名

(3) 幹事    若干名
(4) 監事    若干名

(5) 運営委員 15名以内
(6) 世話役  若干名

 で、次に役割を書いております。

会長、副会長は総会において市町村長の中から選出する。

会長は会を代表する。副会長は会長を補佐し、会長に事故等がある際にはその職務を代行する。

幹事は各市町村長および民間人若干名から構成し、会の活動全般について協議する。

監事は会の会計を監査する。

運営委員は会の運営の実務を担い、議案の作成等を行う。会長、副会長組織の実務者に加え、当分の間、民間からの幹事がこれを兼務する。

世話役は役員・運営委員等からの指示による事務的作業とあわせ、メンバーからの意見・情報の集約や広報業務に従事するなど、会の当面の事務局役を担う。

 

第5条(総会)

全メンバーを対象とした定例総会を年1度開催し、事業・決算に関する報告や会の運営に関する意見交換などをおこなう。

  第6条(市町村長会)

国への要望活動等を実施する機関として、市町村長会を設ける。

  第7条(研究会等)

メンバーは会の内部に、特定のテーマに関わる研究会や、地域別・地方圏別・業種別・年齢別などの連携チームを設けることができる。

第8条(事業年度)

 各年4月1日から翌年3月31日までを事業年度とする。

 第9条(その他)

この規約に定めるもののほか、協議会の活動に関し必要な事項は、会長が定める。

 
 ・・・と言うことで、規約としては最低限のことだけを書きあげたものですが、今後、会の発展に伴って色んな不都合が出てくれば、これに少しずつ加筆・改訂を加えていけばいいのではないか、という考え方をとっております。 


 とりあえずの発足時のものとしては、これでよろしいでしょうか?

 (拍手)
有難うございます。

これを持ちまして、皆様方のご参画によりまして、めでたく会が発足したということなります。

 
 ではここで、本当は笹木・文部科学副大臣よりお祝いのメッセージを頂くところなんですが、すみませんが、文化庁の小林室長からご代読いただけますでしょうか?

 
 <笹木副大臣ご挨拶(代読)>

  (文化庁・小林世界文化遺産室長)

 それではそのまま代読させていただきます。政治家の先生方はよく、最初からご欠席ということでこういった形で代読ということがあるのですが、今朝になって急きょお伺いできなくなったということで、代読ということになり、少し焦っております。

 文部科学副大臣の笹木でございます。このたびは会の発足、誠におめでとうございます。
 また本会にお招きいただきましたことを御礼申し上げます。
 世界遺産の目的は人類共通の顕著な普遍的価値を有する遺産を保護・保全・公開するとともに将来に伝えていくことです。
 皆様ご案内の通り、世界遺産としては現在911件が登録されており、わが国の文化遺産としては11件がこれに含まれております。
 また、わが国の暫定一覧表記載物件としては13件が記載されているところです。

 文化遺産としてはわが国からは平泉を、またフランスからのル・コルビュジェ作品として国立西洋美術館本館が申請されており、6月のパリでの世界遺産委員会において審議されることになっております。
 世界遺産の新規登録につきましては、その審査が非常に厳しさを増しているということでございますが、登録後におきましても、それをどう適切に保護・保全していくかという視点が最も重要です。

また、その保護の過程においては、地域住民の参画が必要不可欠であると考えております。
 これから活動されるにあたって、世界文化遺産に関連する私の問題意識を3点ほどお話しさせていただきたいと思います。

 第1に、文化財の「保存と活用」の両立を図るために、関係する省庁が連携していくことが不可欠であると思います。例えば、世界遺産を活用した観光の問題につきましては、文化庁だけではなく観光庁などとの連携が必要です。

 第2に登録された文化財を手厚く保護し、確実に1000年先にまで伝えていけるような取り組みを構築して行くことが必要だと思います。

 第3に、暫定リストや暫定リストへの記載を目指す地域において、「歴史文化を活かしたまちづくり」への気運を保っていくことが重要であると思います。

 このような観点の下、世界文化遺産を持つ各地域の市長さんなど地域リーダーが連携し、各種の理念を共有し、ノウハウを相互活用ししていくとことを目的とする、この会が結成されることの意義は大変大きいものと考えております。

 それでは、この会が世界遺産に関する地域連携の一歩となることを祈念し、私のご挨拶とさせていただきます。

 
 (拍手)

 

  <役員等の選出(討議資料3)>

  (司会)

 有難うございました。それでは会の討議の方の最後、進めて参りたいと思います。

 討議資料の3、役員等の選出についてでございます。資料3に、ここまで色々な方々のご意見を伺いながらまとめました、会の役員等の案をお示ししてございます。

 まず、関係市町村長様から選出する会長・副会長でございますけれども、会長には門川京都市長、また副会長には1番指定地の姫路市長様・斑鳩町長様、そして同じような人口規模の地域を代表するという意味で、先輩格の所から、政令市の広島市長様、中核市の奈良市長様、また東の代表という意味も含めて、日光の市長様にご就任いただけないかという案でございます。

 次に、会長・副会長に次ぐ役職の「幹事」ですが、これはよくあります常任理事や理事といった役職に相当するものですが、将来、社団法人格等を取る可能性も残しておこうということで、この「幹事」という表現を使っております。この「幹事」には、各市町村長様と会の「呼びかけ人」をお勤め下さった方々から、有川様と藤本様。

それに加えて、文化財・地域づくり・観光の各分野で働き盛り世代の専門家のお三方、工学院大学の後藤先生、京都府立大学でイコモス委員でもいらっしゃいます宗田先生。また観光分野・NPOの代表として大社さんに入っていただいてはどうかという案でございます。

 続いて右のページ中ほど、監事にはPHP研究所の寺田様。そして、会の運営に携わる運営委員には、黒い四角印がついた民間幹事の方々と、会長・副会長の地域から実務者を選んでいただきまして、「運営委員会」を形成するという案でございます。

 最後に事務局的な機能をどうするかということでございますが、当面は歴史街道推進協議会の私・井戸が全体の事務を受け持たせていただきまして、同時に東日本と観光分野については東洋大学の島川さん、西日本と文化財分野を蘭島(らんとう)文化財団の花岡さんに助けていただきまして、3名で皆さまの「お世話役」を務めさせていただければと考えております。

 もちろん近い将来に会の活動が大きくなっていくようでしたら、独立した事務局を設けるとか、副会長を増員するとか、あるいは監査、運営委員を増員するとかといったことも必要になってくる可能性もあるかも知れませんが、スタート時点ではこの体制くらいからでいいのではないか、という案でございます。


 何かご意見はございませんでしょうか?

 

それでは、会の役員等についてお謀りいたします。

このような形でよろしゅうございますでしょうか?

  (拍手)

 有難うございました。

それでは、会長になられました門川京都市長様より一言ご挨拶をいただきまして、以降の進行役をお願いしたいと存じます。

門川会長、よろしくお願いいたします。

 

  <門川会長就任ご挨拶>

 
 (門川会長)

 皆さん、お早うございます。
 「世界文化遺産」地域連携会議の会長に選んでいただきました、京都市長の門川です。
 どうぞ宜しくお願いいたします。

 本日ここに、わが国の世界文化遺産に関わる11の地域の皆さん、そして今日まで世界遺産の素晴らしさにいち早く気づかれ、献身的なお取り組みをされてきました有識者の皆さん、また情報関係、観光関係、地域リーダーの皆さん。 そして中央官庁の皆さん、ここに皆様方が揃って、本日、この会が開催されましたことを、本当に嬉しく感じております。

 また、呼びかけ人の皆さま含め、多くの方がたのお力があって、本日、この会が開催することができましたことを、心から御礼申し上げます。また、大変お忙しい中、文化庁、国土交通省、観光庁等からお越しいただいております。有難うございます。

 世界文化遺産に直接関係する、自治体やご関係者による、こういった会があったらいいなあ、必要であるなあ、とかねてから言われていました。私どももそう感じてました。

しかし、あったらいいなあという話と、実際に作るというのは別のことでございまして、大変な努力が必要だなあということを改めて実感いたしております。

ご尽力賜りました皆様方に心から御礼申し上げます。

何が難しいのかなということで、私も色々考えましたけれども、今日11の地域にお集まりいただいている訳ですけれども、「類まれな価値がある、個性がある」ということで、それぞれ選ばた世界の財産、人類の財産が、それぞれのポリシーを大事にしていくということと、「連携していく」ということの間には超えていかなければならない課題がございます。

 しかし、だからこそ連携が大事だ、ということも言えると思います。

 例えば観光についても積極的にアピールして観光振興していこうという地域もありますし、「これ以上、観光客に来てもらうよりは、保全の方にシフトしていく、その方が大事だ」と考えておられる地域もおありになると思います。

 そういった様々なお考えがある中で、我々はこの会として何をしていくんだ、ということですが、今、副大臣のお話にもありましたが、千年後まで必ずこの世界遺産を守って行くんだ、伝えていくんだ、そのために今を生きる私たちが、それぞれの地域で、また連携して何をするのか。

 国に提案していかなければいけないこともあるでしょうし、また私たち地方自治体も縦割り行政の壁を打破して取り組んでいかなければいけないのだと思います。

 やはり関係者が一堂に会して、それぞれの地域の成功事例なども参考にしていきながら力強く前進していく、そんな会にしていきたいと思います。

 しかし、東日本の地震がありましたが、自然災害など、千年に1回の想定外のことが起こるのが歴史であります。自然災害との闘い、そこからの立ちあがりが歴史であります。どの地域も同じでしょうが、例えば京都でも震度7の直下型地震が起こると、全ての世界遺産が失われてしまう。こういったことをどうするのか。
 京都では例えば清水の周辺に「水のカーテン」 小学校のプール10カ所分の水を常時蓄えておけるようにいたしました。そんなことだけでも、京都だけでも莫大な資金が必要になります。そんなことに対しても率直に意見交換して参りたいと考えます。

 イタリアでは「世界遺産を守ろう」という法律ができたようにも聞いております。この人類の財産である世界遺産をそれぞれの地域が努力し連携し、国民の責任、国家の責任として保存して行く、活かして行く。そんなことも緊急に考えていかなければいけないことではないかと思います。

 また、世界遺産には有形のものだけでなく、無形のものもあります。何よりも世界遺産という人類の宝を大切と思う、美しいと思う、次の世代の子どもたちを育てなければいけません。そういった価値に対して努力する、汗をかく 次の世代の育成も重要なテーマでありましょう。

 そういったことを考えております中で、昨日、交流会である地域リーダーの方とお話をし、大変感銘を受けた次第でございます。

 最も大事なことは、この場を、お互いの苦労やノウハウに学びながら、全地域で共通するテーマ、例えば「世界遺産を1000年後にきちんと継承するのはどうするか」ということに対し、率直に意見交換していくことではないかと思います。

 そのような会にしていくよう努力していくことをお誓いいたしまして、私のご挨拶とさせていただきます。                                    

  (拍手)

 

<会としてこれからどんなことをしていくか>

 門川会長

 それでは、進行の方をさせていただきます。

 これから皆様と、できるだけざっくばらんな雰囲気で、率直に意見交換していく会にしとうございますので、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。その前に、それぞれの地域がこれまでどういったことにお取り組みになり、どんな問題を抱えているかを調べ、あるいはこの会でこれからどんなことをしていくかについて出たアイデアをまとめたタタキ台がございますので、それを井戸さんの方からご説明願います。

 

 (井戸

お手元のファイルにあるもう1つの資料、参考資料と書いたものをご覧下さい。

各地域から実は事前アンケートを取らせていただいております。また、ここまでに皆さまから色々なアイデアをお出していただいております。そういったもの合体させまして、十分なものではありませんが、議論のタタキ台をご準備させていただきました。

 まず、1Pでございますが、「会としてこれからどんなことをやっていくべきと思うか」という参加市町村へのアンケートの結果です。

 市町村からのニーズが高かったのは1つが国への要望活動、1つが記念事業などに対する相互協力、1つが地域づくりや文化財保護などの情報交換、もう1つが東京や海外へのPR活動といった分野でした。

  しかし、どの項目にも「あまり興味はない」といった回答はほとんどございませんで、事業ニーズ自身は割と各分野にまたがって存在しているということを感じました。

 次に2Pに、今後、事業を推進していく際の基本的な考え方について、まとめております。

 まず1つは、会が当面目指すのは、わが国の世界文化遺産関係者、共通の「プラットホームづくり」だという点です。そして、あまり焦って事業展開に走るというよりも、発足から2−3年は議論や知恵出しに重点をおくという感じでいいのだろうということです。

 ただ、議論や知恵出しの柱には2つあるように思います。

 1つは、特に市町村長さんには、先ほど門川会長もおっしゃっておられましたが、「文化財をどうやって1000年先に伝えるのか」といった、次元の高い議論をしっかりやっていただかなくていけないと思います。

2つ目はそれと同時に、並行して色々な事業のアイデアを揃えておくことが大事だと考えております。その部分をやっておきませんと・・・例えばシンポジウムをやった、パンフレットができた・・・だけどその次に何をしたらいいか分からないといった組織になってしまうことが、こういった会では往々にしてあるように思えるからです。

 そういった中で、事業アイデアを一定整理・分類していくことも必要だろうということで、まず@ですが会の事業には、第1に「交流と意見・ノウハウ・アイデアなどの交換」、第2に「共同事業・共同行動の実施」、そして第3に「情報発信・観光事業」という、3つの分野があるように思います。

 またAですが、当然、各事業はその実施時期を「当面」、「中期」、「長期展望」あるいは「将来の夢」、に分けて考えていくことが必要だと。

 さらに、B地域の参画という面では、11地区全部でやるものと、一部のやりたい地域だけが連携するものに分かれていくはずです。

 各地域はそれぞれ個性や事情や規模が異なりますから、全てを皆でやろうとすると、必ず行き詰ってしまうという感じもいたしますし、逆に複数の地域に共通するテーマがあれば、それに参加したいと思う地域だけが「この指とまれ」でやって行きつつ、後の地域はそれを暖かく見守るといった感じが美しいと思います。

 最後に、費用面からですが、5つくらいのパターンがあるのだろうと思います。第1が「費用ゼロでも推進できるもの」。例えば交流、研究、要望活動などです。第2が「少額の費用さえあれば実施できるもの」。例えば、調査研究等をやって、その収益金で全体のイベントをやっていく、といった形です。第3が「参加者負担を原則に実施するもの」。例えばツアーです。各地へのツアーを参加者にお金を出してもらってやっていく。そして第4が「各地域の任意負担での参加や、国ふくむスポンサーの獲得により実施するもの」。例えば海外キャンペーンです。以外に、第5として、関係地域・団体等により実施される事業で、会の関与は原則調整面のみ、といった概ねこの5種類に分かれてこようかと思います。

 
 ということで、3P以下に、ここまでに出てきているアイデアをまとめ、分類しております。


 まず、活動分野の1つめは「交流と意見・ノウハウ・アイデアなどの交換」ということで、3Pから6Pにはアンケ−ト等から、各地域が一体どんな問題を抱えているのかについて、基本的なところをまとめております。

 ほとんど全ての地域・・・あるいは全てではないけれど、規模や環境がよく似た複数地域に共通するものがかなりあるな、というのがお分かりいただけるのではないかと思います。

 例えば保全に対する住民理解をどう促進するのか。あるいは防災対策をどう講じていくのか。さらには国の支援策をもう少し包括的に一本化してもらえないか、といったことは殆どの地域に共通する問題でしょうし・・・例えば、いくつかの農山漁村部の地域は「小規模だけどより大事な活動」への支援策があまりなくて、過疎化や高齢化が進む中、もっぱら地域や住民有志が世界遺産保全上の大きな役割を担わざるを得ない、といったことが共通の課題の1つとになっているというようにも思います。

 いずれにせよこの会を通して、とりあえずは地域や立場が違うメンバーが、いくつかの共通項目に関する情報を、積極的に交換できるようにしていく、ということが、この会のメインストリームなのではないかと思います。

 また7Pから9Pには、各地がこれまでどんなことに取り組んできたかをまとめております。

 基本的なことばかりで、これ以外にももちろん色々あるのだろうと想像しておりますが・・・・各地域間で、そういったノウハウや考え方を相互活用できるようにしていくことも、会の重要な役割ではないかと思います。

 次に9PのA、年に1回集まることも大事だけれど、日常的な情報交換がより重要だと思います。とりあえずは民間メンバーを少なくとも中心にしまして、メーリングリストをできるだけ早く立ち上げたいと考えております。

 また、そういった情報交換を色々やっていくうちに、例えば地域ごと、地方圏ごとなどの分科会や、同じ問題を抱える市町村や関係者どうしの会と化、またNPOどうし、あるいは商工会議所や青年会議所どうし、博物館や宿泊施設どうし・・・といった形で、この会を起点に、世界文化遺産関係者のネットワークがどんどんできるようになれば、素晴らしいのではないかと思います。

 10PBは調査研究です。ジャンルでは文化財系、まちづくり系、観光系、地域連携系。

また範囲では世界遺産全体のものから、各地域単位のものなど色々あろうかと思いますが、先ほど会長も仰いましたが、京都府立大学の宗田先生からは「イタリアのような世界遺産特別法を是非、皆で研究したらどうか」といった相当レベルの高いご提案もすでに戴いているところでございます。

一方では10Pの囲みにあるように、これは各地のお祭りを1月から12月まで並べてみたものですが、例えばこうしたことを通し、どうしたら世界遺産を通して日本の魅力を海外に知ってもらうことができるのかを考えていくのも面白いテーマだと思います。

  中期的な「交流」モノとしては、(2)@にある「自治体間の友好協定や観光協定の締結」、B「市民どうしの相互訪問ツアー」といったことなども考えられるかも知れません。


 次に、11Pから、2つめの活動ジャンルとして「共同事業・共同行動の実施」をあげております。

 その最たるものはAの要望活動ということになりますが、できれば1年くらいの議論の期間を経て、要望内容をまとめて、1年後くらいには国への要望・提案活動を実施できるようになればいいのではないかと思います。

 その前に、@にあるような「会としての理想や将来の夢」を共有化していくことが必要だと思いますし、実はこの点が今日一番、皆様のご意見を頂戴したい部分です。

 以外に、13Pまでに今までに出ているアイデアをまとめていますが、A共同の広報体制を構築するとともに、C平泉の指定も間近ですから、何か東北地方のお手伝いになるようなことを考えていくのも1つだと思います。

 13Pに行きまして、実は中期的には(2)@にありますように、あと2年後からは斑鳩や姫路を皮切りに「指定20周年ラッシュ」が続きます。

 お互いに連携・協力しあえる所はどんどんやっていくべきだと思います。

 もう1つ、社会運動のようなものも何かできるのではないかというアイデアもございます。

例えばA11地区が連携して「観光ゴミの持ち帰り」宣言をやっていけば、やがてそれが日本の観光地の常識になる・・・といった話もまんざら・・・まんざら夢ではないような気がいたします。

 
 最後、13ページ下の方からが、3つめの活動ジャンル、「情報発信・観光事業」です。 


 例えば、14PCにございますように、すでにいくつかの地域が盛んに海外プロモーションをされていますので、これらに連動した形で何かを始めていくということが可能かも知れません。

 中期的には一緒に海外で「JAPANブース」を構えたり、東京で共同のイベントをやってみたり・・・と、特にこの方面では色んなことが考えられようかと思います。

 ・・・ということで、皆さまからいただきましたアイデアを、ざっと20ほどの内容にまとめてみました。

  わが国の世界文化遺産関係者、共通の「プラットホーム」として、またこれから「文化財をどうやって千年先に伝えるのか」といった、次元の高い議論をしっかりやっていただく一方で、並行してこういうアイデアも色々蓄えていかないといけないということで、取りあえずこういった資料を作成させていただいきました。最後に書いてございますように、会として取り組むべきこと、また実現可能と思われることは、もちろんこれらの限りではございません。

  参考資料のご説明は以上です。

 

<意見交換>

  (門川会長)

非常に簡潔にまとめていただき有難うございます。それでは皆さまからご意見・ご提案を頂戴したいと思いますが、何せ人数が多うございますから、できるだけ簡潔にお話しいただければと思います。

まずは小城副会長から各首長さん、一言ずつお願いいたします。


 小城斑鳩町長

 姫路城とともに、第一号の世界遺産となった法隆寺などがあります、斑鳩町長の小城です。

指定から何年か経って、当時京都市長の桝本さんが中心になって、当時、世界遺産に登録されていた地域間の会議を何回かやったことがあります。しかし、その後、何年かで立ち消えになってしまいました。その後、木造の世界遺産だけで何かやろうということになり、3回か4回、パリやロサンザルスでPRイベントをやりました。が、どの自治体も財政が厳しく、負担金の関係でそれも立ち消えになってしまいました。

 私は堺屋太一さんが提唱された歴史街道計画を通して井戸さんとのおつきあいが25年ほどになりますが、この度、色々ご尽力いただいてこの会が結成されたことは本当に素晴らしいことだと思っています。


 今後、重要だと思うテーマの1つはバッファーゾ−ンをどうしていくか、という点でしょう。今はわんさと立候補があり、関西では飛鳥・藤原京や百舌鳥古墳群などが暫定リストに入っていますが、いずれもバッファーゾーンはどうなんだという点に難しさを抱えているようです。奈良でも西大寺や大安寺がこの問題から世界遺産登録に至りませんでした。

 もう1つは今度、平泉が新たな世界遺産として登録されます。震災の中での登録であり、素晴らしいことですので、東北をどう支援していくかということも、この会の中で考えていきたいと思います。いずれにせよ「継続は力なり」です。皆さまのご協力を宜しくお願いいたします。


 田中・南砺市長

  南砺市の田中でございます。門川さんから1000年後を見据えた保存をというお話がありましたが、私どもの所の合掌づくり集落は小さな集落で、高齢化がかなり進んでおります。行政が屋根を葺いたり、田んぼの世話をしたりということもやらなければいけないんですが、やはり基本的にはそこに住んでおられる住民が、自分の地域に愛着をもっていただくようにしていくことが、私たちの大きな仕事ではないかとも思っております。

 そういった意味では今日、行政だけでなく、メディアや民間の方にも入っていただいて会を発足させることができました。例えば世界遺産地域のよさを報道していただくということによって、地元の人が地域に誇りを持つということもあります。そういったことも含め、この会に大きな期待をしておりますので、宜しくお願いいたします。

 

久保田・宇治市長

 先ほど小城町長が仰いましたけれども、かつて世界遺産サミットがありました。姫路市は堀川市長、奈良市は大川市長の時代でした。しかし、それは行政だけの会議で、先ほど皆の共通の課題とそうでないものを分けて考えていこうというお話がありましたが、結果的には色々な意見が出るうちにポシャってしまいました。

 共通課題と個別課題のうち共通課題について言いますと、その1つが防災です。宇治は宇治上神社と平等院が世界遺産になっている訳ですけれども、これらはいずれも淀川水系の宇治川に面した場所にあります。よくぞ洪水にも負けずに、遺されてきたなあということを感じます。洪水だけではなく、宇治上神社の真後ろは山だったりもします。

 文化財を守っていくのは各社寺ごとに、また地域の消防団などの皆さんも含めてやっておりますが、こういった共通課題へ取り組みに関し、今回は本当に幅広い皆さんにご参加いただいております。

 皆さまのお知恵お借りしながら、この会を発展させていきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

 

眞野・廿日市市長

 宮島には年間390万人あまりの観光客が訪れます。うち外国人は20万人ほどですが、震災の影響があり今は、ピタリと来訪が止まってしまいました。実はこういう動き、世界遺産サミットを開いていただきたいなと思っていました所、こういった会が開かれることになり大変喜んでいます。

 共通の課題には遺跡の保護、文化の保護、観光、アクセスの問題など色々あろうかと思いますが、安心安全をアピールしていくということもそれに加えていかなければいけないでしょう。

 想定外の災害にどう対応していくかということもそうです。宮島の場合も津波だけでなく、土石流の心配もあります。

 諸々の課題を抱えていりますので、この会はそういった意味で大変意義深く、有識者の皆様のお知恵をお借りしたいと思います。宜しくお願いいたします。

 

 (姫路市・岡本理事)

 姫路城はまもなく登録20周年です。保全と活用というお話が出ていますが、姫路では先日、周辺の保存活用計画をまとめ、また50年ぶりにお城の大規模修繕にかかっております。全国で初めて文化財の修復を同時公開施設で公開するという事業で、3年間限定です。保全と活用について話しあう機会がありましたら、是非皆さま、姫路にお越しいただき、現場を見ていただければと思います。

 

 (広島市・福本次長)

 広島市は原爆ドームが非核・平和のシンボルとして世界遺産登録されており、世界的にもよく知られています。この役割については今後も変わらないものだと思っています。

 もう1つの柱は、世界遺産をいかに観光に結び付けていくかということです。

 今後も積極的に連携をさせていただいて、観光振興とともに、原爆ドームの保存に取り組んでいきたいと思っていますので、宜しくお願いいたします。

 

 (奈良市・西手参事)

  先ほどから、以前の組織がうまく続かなかったというお話が出ているんですけれども、木造の世界遺産連携の幕引きをさせていただいた当事者が、実は私です。色んな問題があるんですけれども、あるご関係者によると、世界遺産と言うのはオリンピックと一緒で、色んな種目の人が集まっている。その中でどういう合意形成を図り、どんなジャンルで話し合いをしていくかが今後の課題になると思います。

各地には本当に大きな違いがあり、例えば遺産の管理についても姫路市は姫路城そのものを管理されているけれども、奈良の場合は民間が管理されています。これから観光に生きるのか、それとも保存を重視するのかなどについても、それぞれに違います。

役所の中でも観光、文化財など複数の部署がそれに関わっており、どうやって調整していったらいいかなども含め、皆様のお考えを聞き、ノウハウを吸収して帰りたいと思っています。

 

 (日光市・海老原課長)

  日光市は平成18年に合併し、日本で3番目の面積を持つ市になりました。旧・日光市にも多くの観光資源がありましたが、それだけではなく鬼怒川温泉、足尾銅山、今市といった形で観光魅力は増えたのですが、その中心となるのが世界遺産の日光東照宮であることは変わらないであろうと思っています。

 観光振興と文化財保護をどう両立させていくのかということですが、日光で1番問題なのは世界遺産地域への車の乗り入れに関することです。何年も対策を講じてきてはいるのですが、内部だけではなかなか解決できない課題でもございますので、このような会の中で、いいお知恵があれば是非、参考にさせていただきたいと思ってます。

 

 (沖縄県・糸洲主査)

 琉球王朝のグスクが世界遺産登録されている沖縄県です。先般、登録から10年を迎えました。

 色々な問題も出てきておりますが、この会議を通して皆さまのお知恵を集め、また各地域が連携をとって情報発信力を強化できればいいなと思っております。

 

東紀州観光まちづくり公社・北村事務局長

私たちの地域は過疎化の波に襲われており、そういった中で今後、どうやって遺産を維持管理していくのかが最大の課題です。海と山の間に街道が通っている所が多く、災害があれば街道の設置物などが流されてしまったりする中で、さらにそれを支える人がどんどん減っていっています。

同じような課題を抱えてらっしゃる地域もおありになると思います。皆さまがたと力を合わせて頑張っていきたいと思います。

 

(島根県・土江課長)

 石見銀山の登録は2007年7月です。これからやって行かなければならないことが沢山あります。

保存と伝統技術の継承など、地域の課題解消に向けて、皆さまのご意見を活かしていきたいと思います。

 

 (門川市長)

 有難うございました。それぞれの地域の方にお話しいただきましたけれども、次に会の発足にあたっての「呼びかけ人」をお勤め下さった有識者の皆さんからもお一言ずつお願いします。

 

 有川雄二郎:SAP代表

 有識者という訳ではありませんが、「世界遺産劇場」という事業を長年やってきました。世界遺産を貴重な観光資源、地域のシンボルとして捉え、コンサートなどをやっています。観光が冷え込んでいるこういう時期だからこそ頑張ろうということで、今年は高野山、宮島、富岡製糸場、京都の醍醐寺、あとは白川村でも予定しています。

この会の目的には文化財の保存とか観光とかがあるでしょうが、より大きく言えば日本文化の顕彰ということが何より大事ではないかと思います。その際に、我々年寄りが世界遺産を語るよりも、若いアーチストによるコンサート等を通して、日本的なものを守っていかなければいけないというメッセージを、若い人たちに伝えていきたいと思います。

 

藤本貴也:全国街道交流会議会長

 全国街道交流会議という立場で参加をしております。街道を通して歴史に遡って、未来を語っていこうという考えで始まったのが全国街道交流会議です。残念ながら日本は明治以降、欧米をただ見て追いかけるだけで、歴史を遡るということをやってきていません。今回の世界遺産地域にも江戸時代の街道、古代の官道などをそれぞれに持っておられます。そういった意味では色んな切り口で連携を図っていくことが大事だと思います。

この会で共通でできることを何か1つ、いいテーマを1つだけ選んでやっていくことがいいのではないかというのが私の意見です。

 

  (糠谷真平:国民生活センター顧問

 役所の出身は今はもうなけなりましたけれども、経済企画庁です。が、エコノミストと言われることはほとんどなく、霞が関では違う意味で有名になりました。

私には趣味が3つありまして、鉄道に乗り、温泉に入り、地酒を飲むことです。国鉄2万キロ、全部は行っておりませんが、1万5−6千キロくらいの路線に乗っています。温泉は数百カ所。地酒は今は晩酌程度ですが、そういう生活をしております。そういった意味では地域の皆さんとは一致する箇所が多いと思います。

今日は有名な場所の方ばかりで全部行ってきておりますけれども、時間もできましたので、また近くを通ることがあると思います。またお邪魔することがあると思いますので宜しくお願いします。

 

毛利和雄:歴史ジャーナリスト

 世界遺産が911ある訳ですけど、その4分の1は都市にあります。先ほど、市町村長さんのお話を伺いましたが、都市における世界遺産が日本でも多い訳であります。観光という面からも、歴史遺産の保存という点からも、美しい街を作ってそれを活かしていくことが大事なのではないでしょうか。

 と言いますのは、世界遺産条約ができて来年で40周年ということで、今年の秋のユネスコ総会で、美しい歴史都市に関する勧告が出るというお話になってきています。歴史的都市における歴史的地区といいますか、アンサンブルといいますか、現在の指定は古都・京都にしても、古都・奈良にしても街全体ではなく部分部分が評価されてきましたが、これからはそうではなくもっと広げて、都市全体を含め保存を図っていくべきではないかという、勧告が出る訳であります。

 そういった視点で日本を見ていきますと、景観法もできましたし、歴史まちづくり法もできましたし、色んな手法ができ、美しい景観を作っていこうという方向に進んでいるんじゃないかと思います。 

 歴史まちづくり法については事業仕分けで予算がカットされているのは誠に残念でありますけれども、世界遺産を活かして美しい街づくりに取り組む、それがひいては美しい日本づくりにつながる。そういった方向の中で観光が振興される、といった姿を目指していけばどうかと思います。

 

大社充:NPOグローバル・キャンパス理事長

  世界文化遺産は人類の遺産だとは思いますが、恐らく各地域にとって必要なのはお金と人と、それらを回す知恵ではないかと思います。しかし、日本国内だけでは人口も減っていきますし、それを解決していくには無理があると思います。

こういった会を設けることによって、それをハブにして国際的な視点で、世界から価値に共鳴する人たちを集めていくことを考えていけばどうでしょうか?

 お金にしても国から貰うといった話ばかりじゃなくて、民間が集める、海外からも集めるといった知恵をしぼっていくことが大事だと思います。

 

 (門川会長)

  その関係ではちょうどワールド・モニュメント財団の稲垣さんがお越しになっておられますが、いかがでしょうか?

 

 稲垣光彦:ワールド・モニュメント財団日本代表

 民間のリソースをいかに活用し、継続的な活動をやっていくかということが一番大変なテーマの1つだろうと思います。ワールドモニュメント財団はニューヨークで世界中で危機に瀕している遺産を守る、ユネスコの民間版のような役割なんですが、日本においては京都・奈良の13ケ寺のうち4つで表示を作ったりしています。それに応じて国や県の支援も出てくる訳ですが、それら以外の国内における支援というものがあまり広がらないんですね。

最大の問題は日本には寄付文化があまりないということだと思うんですが、そういった意味では文化財をもつ各都市がうまく連携して税制改革というものを提言の1つに入れていかなければいけないと思います。海外に資金を求めるというのは1つの案だと思うんですが、その前に日本の中で、好意をお金に換えていくような仕組みを考えていくことが大事ではないでしょうか?

 

 (門川会長)

  有難うございました。それでは次に国からのお出席者にお一言ずつお願いいたします。

 

 (文化庁・小林世界文化遺産室長)

 名簿の順番で失礼いたします。副大臣のスピーチ原稿の中にも入っていましたように、世界遺産というのは登録されるまではマスコミの取り上げ方も含めていいけれども、登録された後、特に遺産を持っておられる市町村が色々な課題をかかえておられるように思っていました。

 そういった意味ではこのような会を通して課題を共有し、行政だけでなく民間の方々も交えて会を発足されたのは大変素晴らしいことだと思っておりますし、この会の意見をこれから参考にさせていただきたいと思っております。

 また、毛利さんも言われていましたように、来年が世界遺産条約ができて40年、また日本がそれを批准して20年という記念すべき年に当たっています。このような記念すべき年に向けて、この会で様々な成果がでることを期待しております。

 

(国交省・岸 景観・歴史文化環境整備室長)

 本日はお招きいただき有難うございます。世界文化遺産のご関係者がこうやって一堂に会し、意見交換ができる会ができたことを大変意義深くまた嬉しいことだと思っております。

本日出席いたしまして実感いたしましたのは、各地にはそれぞれ個別の課題もある一方で、共通する課題もあるということです。世界遺産をいかに活用し、次の世代に継承していくかが大変大きな課題であると感じました。

 私どもはまちづくりの方面で歴史まちづくり法、景観法など、この会のテーマにもかかわる法律を所管しておりまして、国の対応が縦割りだというお話もありましたが、文化庁・観光庁などと連携を密に取りながら皆さまの思いを形にするよう力を尽くしていきたいと思っておりますので、今後とも宜しくお願いいたします。

 

(観光庁・瓦林国際交流推進課長)

 所用で遅れましてすみません。まず、会の発足を心からお祝い申し上げます。

私どもの仕事はインバウンド、外国人のお客様に日本に来ていただくために、日本の魅力をPR・情報発信していくということです。文化財、自然など色々な魅力があると思いますが、世界遺産はどこの国でもその魅力の中心に位置する1丁目1番地なものであるという認識です。

 そういった意味では私どもとしてはこういった形で各地域、各省庁が連携できるというのは大変嬉しいことですし、私どもにも色んな支援メニューがございますので、他省庁とも連携しながらお力になりたいと思っております。

 一言だけインバウンドのお話をしますと、ご承知のように大地震や原発事故の影響で、残念ながら今までの日本の最大の魅力でもあった「安心・安全」への信頼が大きく揺らいでしまうという事態が発生してしまっております。現在、ここまでにやってきた通常のプロモ−ションを一旦棚上げするような形で、安心・安全への信頼回復に取り組んでおります。

メディア・旅行会社を招待するなど色んな形で、信頼回復に取り組み、また日本の魅力をPRしていきたいと思っておりますので、宜しくお願いいたします。

 

 (門川会長)

有難うございます。それでは今日は本当にたくさんの地域リーダーやご専門家の皆さまにご出席いただいております。一言ずつお言葉を頂戴したいと思います。

 

 (井植美奈子:井植インターナショナル代表

 参加させていただいて光栄に存じます。私の世界遺産との関わりは2009年、門川市長にもお越しいただいて、京都の二条城でチャールズ皇太子のチャリティを開いたことです。それがご縁となり、チャールズ皇太子のお庭に小さな日本庭園を作ろうということになり、現在、作庭作業を進めています。先日、「椿の花が来るといいね」というお話が出ているという連絡を頂きまして、宇治の平等院にある600年前からの室町椿をもっていくことになりました。

このように微力ではあるんですが、継続が一番大事だと思っております。しかも、日本には宝物が一杯あります。現実問題として輸入が駄目なら、来ていただくことが難しくなっているのなら、輸出、すなわち外国に持って行って情報発信することを考えていけばいいのではないかと思います。このような会を通して、皆さまのお力もお借りしながら、そういった活動をしていきたいと思います。

 もう1つ、11月にロックフェラー財団のロックフェラーご夫妻が海洋自然保護のNPOの事業として来日されます。せっかくの機会ですので、世界遺産のある地域でイベントなどもやりたいと思っていますので、ご指導ご協力いただければ有難いです。

 

糸永 正之:アラスカ大学フェアモント校顧問

 回ってくると考えてなかったので戸惑っていますが・・・自己紹介をしますと、ネパールに長くおりまして、その後、ナショナル・ジオグラフィック社にもおりました。日本にいた時は日本人の目で、ネパールにいた時はネパール人の目で日本を見、ナショナル・ジオの時はアメリカ人の目で日本を見てきたという経験があります。

 今日お越しの各地には色んな人がおられ、またツーリズム関係の分野などで成功している方もたくさんおられることと思いますが、残念ながらそれは「点」でしかないように思います。こういった会では「点」を「線」にし、そして最終的には「面」として効果を出していくことが大事で、そういったことが、この会の方向性なんだろうと理解しております。

 各地に行けばどこにも地酒があり、地元の人は地元の酒が一番うまいなんて言う訳ですが、一方では世界遺産については「今さら指定されてもピンと来ない」という人が少なくないのも事実でしょう。これは世界中どこでも同じようなもので、よその人の目、海外からの集客によって、地元の人が価値に気づくということがよくあるものです。

先ほど観光庁の方が海外からの集客を積極的にやっていきたいとお話しされていましたが、そういったことをきっかけに外の人の目で各地を見てもらうことはとても大事なことだと思います。

もちろん動機づけには情報が必要です。が、日本はG8の中でも最も情報発信が稚拙だと言われています。行政サイド、地元サイドの目だけに固執せずに大いに海外に情報を発信していくことが大切だと思います。

今は日本に、恐らく朝鮮動乱以来と言っていいくらい世界中が注目しています。逆にいいチャンスかも知れないと思います。


  


 (井上浩司:京都駅ビル開発取締役営業部長
 

京都駅ビルを管理しております。短絡的な話かも知れませんが、世界遺産・京都の玄関口となる施設を管理しておりますので、情報発信に協力させていただきたいと思います。

京都に何度でも来ていただくことと合わせて、繰り返し古都・京都で日本の世界遺産を見てもらいたいと思います。駅前広場、ステージともに1000人くらい収容できます。使用料はいるのですが、そこは門川市長から色々ご提案いただければ、便宜を図らせてもらいます(笑)。

 7月からは交通媒体、駅のポスター等を扱っているJR西日本コミュニケーションズという会社に異動する予定ですのでそちらの方でも色々ご協力できればと思います。

 

大島直行:伊達市噴火湾文化研究所長

 希望することはただ1つです。150人規模の会ができたというのは、150人規模の会社ができたのとある意味、同じことです。この150人が常に情報交換できるシステムを是非考えていただきたいと思います。

 

岡井健:NPO日光門前まちづくり理事長

 日光の門前町でまちづくりに取り組んでいます。

駅前から東照宮にかけての道路の拡幅がありまして、建て替えを含めた景観づくりをやってきましたが、今は震災で旅館が本当に大変な状態になっています。

 街の立て直し、観光、色んなテーマがありますが、このような繋がりを作っていただき、参加させていただいて本当に有意義でした。

 

 (熊倉浩靖:群馬女子大教授、NPO群馬理事

 毛利さんに誘われ気軽に来ましたが、とんでもない会のキャスターメンバーになってしまったという思いです。1つだけ直感でご提案させて下さい。

暫定リストの場所も含め、各地の魅力を紹介すれば、私たちの国の歴史が1冊で分かる、小学生や中学生、あるいは生涯学習などにも活用できる教科書ができるかも知れないと思いました。世界遺産や美しい街づくり。また非常に大きな価値。こういったものが1冊の本で・・・毎週1冊とかじゃ駄目ですよ(笑)・・・分かるようなものを作れば、各国語に翻訳したり、ブログで展開したり色々できるように思います。直観的なご提案ですが・・・。

 

 (門川会長)

  私の直感ですが、是非あなたに編集長になってもらいたいと思いました(笑)。

 

熊崎俊介:旅行読売出版社 営業企画部編集担当

 創刊45年になる旅行読売の編集をしております。しかし残念ながら、世界遺産という冠だけではなかなか読者を引きつけられなくなっているような気がします。どういった企画をすれば、世界遺産の価値がそういった方々の心に触れるものを作ることができるのか?

 各地域で頑張っておられる方、熱い思いをお持ちで何かをやりたくてウズウズしている若い人たちを巻き込んで、熱い熱い会にしていく中で、そういったことも考えていきたいと思います。

 

(結城公正:京都新聞東京支社長、齊藤相談役代理)

京都・滋賀を中心にカバーしております、京都新聞です。門川さんが中心になられるということで参加させていただきましたが、各地には地元をよく知る新聞社があります。

今日も神戸新聞の皆川支社長さんがお見えですが、各地の新聞社とスクラムを組んで、末長くこの会を支えていきたいと思います。

 

澤田利彦:松蔭大学文化観光学部長

 大学に来る前、もともとはJNTOで40年近く、日本を海外に紹介する仕事をしていました。この連携会議で、私の経験で役に立つことがあれば、いつでも協力したいと思っておりますので、宜しくお願いします。

 

白鳥 哲也:まちづくりNPO 沖縄イケメン連

 沖縄から来ました、沖縄イケメン連の白鳥です。NPOの名前を聞いてふざけているのかと言われるんですが・・・イケメン力を使って、いかに地域を盛り上げていくかに取り組んでいる、いたって真面目な団体です。

2004年に松山でこのような取り組みが始まり、その兄弟分として去年、発足しました。例えば、地元の人たちが価値になかなか気づかないものに、若者なりの視点で光を当てていこうという活動などをやっています。

今、始めているのは「巡礼のルート」づくりです。東を沖縄では「あがり」と言いますが、東というのはパワーの源です。首里城から東、南城市にかけて14の聖地があり、これを1泊2日で歩いて回ることによって、琉球王国に思いを馳せながら沖縄の新しい旅の形を考えていきたいと思い、これまでに5回ほど事業をやりました。

最近の旅行商品のキーワードは「健康・環境・癒し」ということで、今の時代にあった旅なんですが、ただ・・・沖縄の人はどこに行くのも車で、ほとんど歩きません(笑)。また2市1町に跨っているものですから、自治体の情報発信にも温度差があります。

 そういった部分を外の者の視点、若者の視点で何とか変えていきたいと思います。今日も地元と外からの立場の関係といったお話が出ていましたが、イケメンという発想、若い力で、地元の皆さんに自らの魅力に気づいてもらいたいと思っていますので、宜しくお願いします。

 

 (門川会長)

  沖縄から自費で来ていただきました(笑)。本当に有難うございます。

 

 (須藤元:ベネフィット・ワン顧問

 航空会社、旅行業を40年強経験してきました。観光に関しては2つありまして、1つは先ほどからのお話にありますように日本は情報発信が下手。もう1つはカスタマーオリエンテッドが観光の基本ではないかと。

 日本のよさをこちらから売るというよりも、世界各地からの方に日本のよさを見ていただいて旅行商品にしていただくことが大事だということです。アメリカ人、中国人、みんな違う訳ですからね。

 会の課題は文化遺産の保存など色々あると思いますが、まずは情報の共有化。そしてそれを発信していくことが一番大事だと思います。また行政や国に解決していただかなければならないことがあれば、会を通して提案して行く。そういった会を目指すべきだと思います。

 微力ながらお手伝いします。

 

多田稔子:田辺市熊野ツーリスムビューロー会長

 和歌山から来ました。半官半民の玉虫色の団体です(笑)。私たちの組織では2009年からサンチアゴ・デ・コンポステーラの観光局と共同のPRをやっております。

 提案は先方からありました。サンチアゴでさえ、単品ではお客さんを呼び込めないということなのだろうと思います。私たちも、またここにおられる皆さんも、自分たちの世界遺産を価値あるものだと思い、また多くのお客様に来ていただきたいと思っておりますけれども、なかなか単品では難しいというという現実もあるのだろうと思います。

 今日、こうやって関係者が一堂に会した訳ですから、世界遺産地域がうまい連携をとれるようになればいいなあと思います。

 それから、紀伊半島の霊場と参詣道は3つの県にまたがっており、それぞれの県は頑張っているんですが、1つでやると価値は3分の1にしかなりません。「3つあって1つ」という体制にはまだなっていないようにも思いますので、この会を通して、そういった問題点も解決していける仕組みづくりができればいいな、と思っております。

 

辰巳裕:NPO奈良好き人のつどい理事長

 名前の通り、奈良が好きな人が集まっているNPOです。ただ、集まるだけではなく奈良のこれからのまちづくりを考え、奈良のためになることをやっていこうとしています。また、市民以外にも奈良を好きな人たちが日本全国に渡ってつながっていこう、といった活動もしております。

 この会の結成を通し、世界遺産が持つ魅力を皆で発信していければいいと思っています。

 

島川崇:国際地域学部国際観光学科准教授

 熊崎さんのお言葉をお借りするなら、あり余るエネルギーをどうやって発散させたらいいか困っております(笑)。今回、東日本担当の事務局というか、お世話役を拝命しました。東日本、今、本当に大変な時期ですが、一生懸命やっていこうと思っております。

 本職は東洋大学でサスティナブル・ツーリスムなどを研究しています。保存か観光かというお話がよくありますが「観光で保存」するということを考えていきたいと思います。

お見受けする限り、この会にもマグマが鬱積している方が何人かいらっしゃりそうなので、そういった若い力も集めて、会を盛り上げていきます。

 

谷博子:前JNTOソウル事務所長

昨年まで7年間、ソウルで日本への観光客誘致に携わっており、先般帰国しました。韓国の方に日本にお越しいただくということで、世界遺産にも当然大きな関心をもっていましたが、なかなかアクセスの問題とか知名度の問題とかがあり、十分に取り組むことができなかった面があるかも知れません。

一方、韓国人は自分の国に来てもらうことに本当に熱心で、空港などのアクセスをよくする、観光地の知名度を高めることに本当に貪欲です。例えばソウルの近郊に華城(ファソン)という世界遺産があるんですが、ここも「ここまでやっていいのか?」と思ってしまうくらいに活用されており、周辺がどんどんきれいになって行っていたりします。

 そういった意味では、先ほどからのお話にありましたように、観光と保存は相反する概念ではないと思います。

この会に参加させていただくことによりまして、そういったことももう一度考えていきたいと思っています。

 

寺田 昭一:PHP研究所

 月刊「歴史街道」の創刊・編集に携わっておりまして、関西の歴史街道計画とは25年のつきあいです。私は大阪生まれなんですが、この歴史街道計画ができるまでは、正直言って伊勢は伊勢、京都は京都、奈良は奈良と言う感覚しかありませんでした。しかし、それらを繋いで「歴史街道」と呼ぼうという運動が起こり、視点が大きく変わりました。世界遺産にも同じようなことが言えるかも知れないと思います。

 現状では世界遺産という括りがあっても法隆寺は法隆寺・・・という感じしかしませんが、これを「点」から「線」「面」に連携させる中でどういうことが起こってくるのかが楽しみです。

 例えば、色々なアイデアが紹介されましたが、お金がなくてもできることとして、観光ゴミの持ち帰り運動、これは行けるなあと。あと、とても大事なことは現地の方々に誇りをもって外からの人を迎えていただくという点だと思うんですが、いい観光地に行くと子どもたちが「こんにちは」って挨拶してくれますよね。

 観光ゴミの持ち帰りと、挨拶運動、この2つはとりあえずすぐにでもできるし、世界遺産地域が連携してやれば全国に広がっていく話にもなると思います。

 

土居好江:NPO遊悠舎京すずめ理事長、京都文化観光研究所所長

 京都には多くの世界遺産がありますが、私は暮らしの中にある文化遺産を発信する活動をしております。

 例えば、地震のお話を何人かの方がされていましたが、実は清水の舞台はまさにその活断層の真上に建っております。音羽の滝はその岩盤をくぐり抜けてあのような姿になっているのです。清水は釘を1本も使わずに建てられ、地震にも負けずに今に伝えられている。自然に寄り添った日本人の知恵が凝縮しているからだと思います。銀閣寺の座禅石は、断層の怒りを鎮めるために置かれた。そんなお話もあります。本願寺は100年に1度ずつ大修理をされ、300年に1回は解体修復をされます。1000年育った木は以降も1000年もつと言われていますが、しかし南に建物を作る時には、その木も南向きに置いてやらなければいけないそうです。


 世界文化遺産のハードという部分だけではなく、私はそこに込められた日本人の知恵、自然に寄り添った先人の考えを未来への羅針盤として、お伝えしていくような活動をしていきたいと思っています。

 

(門川会長)

 もう12時が来てしまいましたが、せっかくですから全員にご発言願いたいと思います。

 

富岡 哲也:交通新聞社情報事業部「トレたび」チーフエディター

 旅行雑誌の編集をやって14年です。が、「世界遺産の素晴らしさは何か、富岡説明しろ」と言われた時に、それをできる自信がありません。自信をもって言えることを、この会の議論の中で身につけたいと思います。

地元や日本人が誇りを持ち、課題についても共通認識を持つことが大事だと思います。皆さんのお知恵もいただきながら、勉強していきたいと思います。

 

中村直美:交通新聞社第1出版事業部長、「旅の手帖」編集部長

  「旅の手帖」でまさに今、世界遺産特集をやろうとしています。

暫定遺産も入れたりと色々工夫している所ですが、世界遺産がとても人気のあるテーマであることは間違いありません。が、何かプラスアルファーを考えた企画を加えていかないと思ったほど売れるテーマではなくなってきている、という点も熊崎さんが仰った通りだと思います。自分なりの心の世界遺産といったちょっとしたお遊びを加えるなど、色々工夫していきたいと思います。

あと、先ほどから情報交換のお話が色々出ていますが、皆さんと色々情報交換できるのがこの会の私の楽しみだと思っています。

 形骸化しないといいなあということを思います。やはりフランクになっていくのが一番で、こういった四角いテーブルを囲むだけじゃなしに、できるだけ早い時期にみんなでどこかに泊まりにいくとか、そういったことの中で生きた情報を交換できるようになればいいのかなあと、そんなことを勝手に思っております。

 

中山栄一郎:NPO歴史と出会えるまちづくり船場城西の会

姫路から来ました。このような会に参加させていただいて本当に有難いと思っています。

姫路城の西側でまちづくり活動をやっています。と、言うよりも生まれ育った場所がたまたまバッファーゾンの中にあります。豊臣秀吉にゆかりの場所があったり、西国街道が通っていたりするのですが、活動の始まりは明治時代からの日赤病院が郊外に移転することになったことで、町がさびれたり往来がなくなっていくのをどうしようかということになり、8年前に住民だけで活動を始めました。今は260名ほどの会員がいます。地元に遺された寺院や町家を活用しながらイベントをしたり、地域計画に関わらせていただいたりしています。

私たちは地道に数十人から始めてきた団体ですが、私たちの地域は姫路城ではなく姫路を支えてきた町ですので、国際的なお話の一方で私どもの話も聞いていただき、また私たちも色々なお話を参考にさせていただきたいと思います。

 

野々村邦夫:日本地図センター理事長

長年、地理に関わっております。自然の話、災害の話が出ていますが、日本列島というのは東日本大震災が起こったのと同じ理由で形成されたものです。

そういった場所に住んでいる訳ですが、その日本列島の中にある世界文化遺産地でこういった会が結成されたことは大変素晴らしいことだと思っております。

また来年は記念すべき年だということですが、こういった会はお金がないというのが常ですので、そういった点はこちらで工面することも含めて、何か考えていきたいと思います。

 

 (門川会長)

  有難うございます。大変心強いです。

 

羽生冬佳:筑波大学准教授

 私たちの大学では日本で唯一、大学院の中に世界遺産専攻があります。限られたスタッフで運営しております中で、本日皆さまのお話は大変勉強になりました。

 さて、世界遺産は条約に基づいて指定されている訳ですが、「国際」ではなく「世界」を冠していることが特徴の1つだと思います。つまり、文化遺産を国と国との関係で語るのではなくて、国際という枠組みに中で語ろうということです。

 そういった中で、このような形で集われた日本の関係地の皆さまは、世界に、参加した国の価値を認識させていくということが務めの1つでもありますので、そういったことをこの会議で議論していけばいいのではないかと思います。

 ただ一方で、各地域はまちづくり、文化、観光という具合に、いわば全ての地域にも共通する課題を同様に抱えてらっしゃるということもあります。そういった面ではこの会議は、皆さんがいわばトップランナー的な役割の中で、モデル的な取り組みをおこなっていく中で、他の地域に何かを伝えていけるような成果を出していくといったことができればいいなと、今は思っています。

 

皆川広一:神戸新聞執行役員東京支社長

 さきほどから出ておりますように、世界遺産は登録されるまではいいけれども、登録されたらそれを守り続けるという大きな責任が課されている訳でございます。これを言葉にするのはたやすいことなんですが、色んな悩みとか課題があります。

 文化財保全の側面、市民生活の関わりとの側面、経済活動、観光との両立をどう図るかといった側面など、共通する悩みや課題について共に考えていこうといった組織が立ちあがったというのは本当に素晴らしいなあと思います。

この組織の立ち上げに関わられ、世話人になられた井戸さんは何と姫路城から400mの所で産湯を使い、学生時代は早稲田の競走部で駅伝をやっておられたということで、最高のランナーといえるかも知れません。

門川会長が仰ったことにも大変感銘を受けました。

と、言うことで・・・共にいい汗を流しながら、頑張っていきたいと思います。

 

山岡孝典:日本旅行中国本部長

世界遺産関係地でもおもてなし、防災など課題は沢山あります。しかし、これまで色んな地域に住んできましたけれど、行政と民間が一緒になって取り組んでいる所に成果が出ているように思います。

現在、旅行業界も大変で、このGWは九州だけが2・5倍、あとはどこも大変という状況です。今、日本国中の人は動きたくて仕方ない状態にあるとも言えますので、これから皆さまとともに頑張っていきたいと思います。

 

山上直子:サンケイ新聞文化部

 我々マスコミは世界遺産に登録される時は盛んに報道する訳ですが、それが過ぎると反対に問題点ばかりを報道するような所があります。ただ、問題点を世の中に明らかすることで自浄作用が生れてくるということもございます。

皆さんから色々な問題点を教えていただいて、それをどうしたらいいのか、さらに多くの人たちにも考えていただく。そういった仕事もしていきたいと思います。

 

吉永憲:共同通信社情報企画本部総務

 気楽にお声がけいただき、気軽に参加しましたが、大変な会議だなあと思いました。

私自身は地域再生という話の中で観光と関わり始めました。担い手問題、引き継いでいく責任など、全国の観光地とも共通する色々な問題があります。

本業の方では国際的な情報発信を今までとは違い違う形でいかに広くやっていくかということで、電波、インターネットの仕事もやっております。

 

 (白川郷自然学校の西田様近畿日本ツーリストの福井様は定刻にご退席)

 

 (門川会長) 

有難うございました。それぞれが実践されていることを交えてご発言いただきましたが、色々な熱いご意見に加え、多くのキーワードが出てきました。

情報の面では世界への発信をどうしていくか、連携という面では広域連携だけではなく民間との連携が大事だと言うお話などもありました。

今日お越しの地域にはそれぞれに素晴らしい世界遺産がある。その最高の価値に気づいてもらい、それを保存し、観光に活用する。1000年先にも世界遺産が保存され、活かされているそんな日本づくりにともどもに頑張っていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 (拍手)

 さて、私は教育長時代にいつも行っていたことがあります。

 平凡な教師は「言って気づかせる」。優秀な教師は「説明し率先垂範する」。そして最高の教師は何かというと「人の心に火をつける」。

 この会の発足には井戸さんはじめ、多くの方々のご尽力がありました。

最後に、皆さんにも皆で拍手をしたいと思います。有難うございました。

 
 (拍手)

  (井戸)

 皆さまお疲れ様でした。ただ今、11時73分になりましたが(笑)、これにて「世界遺産地域」連携会議発足会を終了させていただきます。なお、引き続き12時半より、当館地下1階「赤トンボ」にて、交流会を予定しております。申し込んでおられない方もご参加可能ですので、是非お集まり下さい。 


  

  

「世界文化遺産」地域連携会議 設立趣意書                  
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